大谷大学 国際文化学科文化環境3回生 2019年度前期

有田ミカンのおいしさの秘密

 

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私たち文化環境ゼミ3回生は和歌山県の名産品である有田蜜柑を調べるために、2019年6月2日に和歌山県有田市へ行ってきました。10時21分に和歌山県箕島駅に着いた私たちは、早速有田郷土みかん資料館に行き、有田蜜柑とはどのようなものなのか調べてきました。有田蜜柑の成り立ちははっきりとはわかっておらず、今の所3つの説があります。

 

 1つ目は糸我という場所に元々蜜柑の木が自然に生えていた説です。この説は糸我稲荷神社に伝わる本に、約580年前に蜜柑の木が自然に生えていたと記されていました。糸我荘の神田池(宮田池)という場所に、あった樹の実が、蜜のような味であったことから「密柑」と呼ばれ、近くの山の畑へと移され、広まった説です。

   2つ目は伊藤孫右衛門が持ってきたという説です。この説は伊藤孫右衛門という人物が今から約440年以上も前に、九州から蜜柑の苗木を2つ持ってきて、大きく育てると苗木を増やしていき、今のような蜜柑の産地になった説です。

 3つ目は紀州徳川家初代・徳川頼宣こと南龍公が、蜜柑づくりを勧めて作らせた説です。今から約400年前に南龍公が和歌山県に住み始めたころに有田郡へと訪れた時、有田郡の人々が山が多く、平地が少ないために貧しい生活をしていました。そこで南龍公は、熊本県八代から小蜜柑の木を取り寄せ、領地で育て、大きく成長させるとその木を有田に移し、育てることを勧めたことで広まっていった説です。

どの説が正しいにしろ、古い時代からこの町で大切に育てられてきたことがわかります。

また、有田の蜜柑には2種類あるとされ、紀州蜜柑と温州蜜柑と言われています。紀州蜜柑は小ぶりで、酸味が少なく、香りがいいですが、種が多いという特徴を持っており、温州蜜柑は大ぶりで、種がないことが特徴といわれています。これら2つの蜜柑が関係があることまでは調べられませんでしたが、1813年に温州蜜柑の栽培が始まるということが「紀州柑橘論」に書かれていることから、その前から育てられていた紀州蜜柑の品種改良によって、温州蜜柑ができたのかもしれません。

 

有田蜜柑が広く知られるようになった要因は、1632年に滝川原村の藤兵衛という人物が初めて江戸に四百籠の蜜柑を送ったことからです。今まで出荷していた堺や大坂を含め、江戸へも出荷されるようになり、広く知られるようになったそうです。また紀伊国屋文左衛門という人物が嵐の中、江戸へ蜜柑を船で送ったことなども有名な話としてあります。

 

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積み込み場所のジオラマです。

 

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江戸初期に使われていたとされる蜜柑を運ぶ船です。

 

その後、私たちは有田市語り部の方にお話を伺い、地元で蜜柑がおいしいと有名である新堂のほうに実際の蜜柑畑で土の成分を知るべく、向かいました。

 

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駅前の定食屋さんでお昼ご飯を食べました。

ご飯のあとは駅伝いに新堂に歩いて移動しました。

 

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 奥に見えるミカン畑が今回調査する場所になります。

 

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まず私たちがミカン畑に登っている途中に目に入ったのがこのモノレールです。正式名称はわかりませんでしたが、山のいたるところありました。なぜかというとその場にいるとわかるのですが、とても坂が急で、ある場所の傾斜になると15度にもなりました。そのため、上の方から蜜柑を持って降りてくるのが大変なためにこのモノレールに乗せて、トラックが止めてある場所までおろしてきます。

 

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現地の農家さんに聞いたことですが、石垣による排水の良さと海からくる潮風が蜜柑をおいしくしてくれることから、山に蜜柑畑を作ったそうです。しかし海に近すぎる場所にはあまり蜜柑畑が目立つほどなかったので、近すぎても駄目なのかもしれません。

 

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 蜜柑の木には小さな実がなっていました。

 

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石垣です。変輝緑岩と砂岩が多く見られました。地質図でこの場所は変輝緑岩が分布しているとされているので、砂岩はほかの場所から運ばれてきたものと予想できます。

 

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石垣の中に少しだけみられたシャープペンシルの上にある黒っぽい石は、苦鉄質鉱物を多く含む岩石です。このあたりが地質図によると変輝緑岩が分布しているので、この石はこの場所の石である可能性があります。

 

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石の性質を調べるために沢の中で露頭を見つけました。動かされたような形跡もなく現地の露頭であるとわかります。結果は緑色岩であることから、このあたりの土壌は鉄やマグネシウムなどを多く含んでいることがわかりました。このことから、蜜柑のおいしさは土壌の鉄分と深く関係しているのではないかという考えに至ります。

後期では別の蜜柑畑を調べ、その場所も似たようなものか調べたり、蜜柑の収穫などを体験したいと考えています。